原発は是か非か?資源エネルギー庁幹部は「原発なしでは日本の経済活動が大きく落ち込む」と、電力不足を警戒

日本経済に深刻な影響 産業空洞化に拍車

 「原発ゼロ」が目前に迫り、日本国内の電力不足が深刻化してきた。政府は火力発電の増強で穴埋めを図るが、燃料コスト増加は企業や家庭向けの電気料金を引き上げ、経済活動の足を引っ張る。太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーも安定供給面で不安が残り、電力危機が日本企業の海外流出に拍車をかけ、産業「空洞化」を加速させる心配が強まっている。

 資源エネルギー庁幹部は「原発なしでは日本の経済活動が大きく落ち込む」と、電力不足を警戒する。

 昨年3月の東京電力福島第1原発事故以降、定期検査に入った原発の再稼働は進まず、最後の稼働原発である北海道電力泊3号機も5月初めまでに定期検査に入る。東日本大震災前、総発電量の3割を供給していた原発の全てが失われる影響は小さくない。

 全原発を火力発電で補えば、原油液化天然ガス(LNG)などの輸入にかかる費用が年間3兆円増え、「それだけの国富が海外に流出する」(経済産業省幹部)。イランがホルムズ海峡の閉鎖に踏み切れば、深刻さが更に増すのは明らかだ。

電気料金の値上げも、産業界を直撃する。東電が予定する大口向け電気料金の17%値上げには、東京都などの自治体が、「企業活動への配慮が欠けている」として猛反発する。政府関係者は「経営に余裕のない中小企業では、人員削減に追い込まれるケースも出てくるだろう」と指摘する。

 電力不足の解消に向け、再生可能エネルギーの普及に向けた動きもあるが、太陽光発電風力発電は個人や企業の導入が前提で、大手電力が主体の原発や火力に比べ、導入量の見通しがつきにくい。

 再生可能エネルギーは、発電量が天候次第で安定しない欠点がある。安定供給には蓄電設備や送電網の強化が必要になり、結果的にこうした対策費用が電気料金の上昇につながる。

 日本経済は円高自由貿易体制構築の遅れで、国際競争力が低下している。経済活動に不可欠な電力も高価で不安定になれば、企業が国内の製造拠点を維持することが難しくなる。産業界は「日本の経済、社会は原発なしでは成り立たない。政府は再稼働に全力を尽くすべきだ」(鉄鋼業界首脳)と求めており、再稼働に向けた政治判断が注目されている。