北野監督、仏最高勲章を受章 「本当に夢のよう」類をみない自由さをもって物作りを進める直感的な才能が評価
仏芸術文化勲章の最高章コマンドール章を授与された映画監督でタレント、北野武さん(63)が13日に帰国し、成田空港で会見した。北野さんは「映画は映画、(テレビの)バラエティーはバラエティーと分けて(評価して)くれるんでありがたい」と喜びの言葉を語った。
勲章の授与は9日、北野さんの絵画などの美術作品が展示されているパリのカルティエ現代美術財団で行われた。例年の授与会場とは異なる場所で、フランスのミッテラン文化相がわざわざ展示会場に赴き、授与するのは異例という。
ミッテラン文化相が説明した受賞理由は、「映画監督としての活動はいうまでもなく、あなたはひとつの才能を持った人ではない。人々を笑わせることもできるし、感動させることもできるし、怖がらせることもできる。ひとつのジャンルではなく、あらゆる面で支持者が存在する。類をみない自由さをもって物作りを進める直感的な才能を持っている」というもの。同席した所属事務所の森昌行社長は、個展や映画上映、芸人としてのキャリアなどすべての活動が評価されたことを挙げて、「今回は文字通り、ビートたけしをも含むたけしそのものが表彰された」と説明した。
北野さんは「フランスでの映画の認知度はカルト的なところがあって、かなり熱狂的なファンもいるが、(テレビ番組の)『たけし城』がヨーロッパでかなり人気が出てきて、今ではネットで日本のものを見ることができるんで、こういう仕事もやってるんだという認識があった。映画監督としては、日本のテレビ(のお笑い芸人ぶりを)を流されるのはやばいかなと思ったけど、フランス人は才能がもっとあるだけという受け止め方をする。お笑いが映画に悪影響を及ぼすなんていう気は持ってない。ばかばかしいことをやっても、それはそれとしてみてくれるので、気が楽になった」と喜びをかみしめた。
北野さんは、空港に到着したばかりで少々疲れた様子だったが、会見が始まるといつものように冗談を連発。「フランスの文化勲章ですから、これから日本の文化勲章と、人間国宝を一日も早くもらいたい。人間国宝をもらったら無銭飲食で捕まるのが私の夢なので、ひとつ日本の文科省のみなさま、よろしくお願いします。紫綬褒章はいらないですから」とユーモアたっぷりに感想を披露した。
さらに、自ら「勲章をもらってまいりました」と、「バンクーバー」とペンでかかれた金メダルを持ち出して、「金メダルは関係ないな。出したとたんにばれちゃってるけど」とボケをかます場面も。ようやく本物の勲章を報道陣に掲げ、「『ドン・キホーテ』と書いてあります。あ、こういうことを言っていると、フランス政府から剥奪(はくだつ)されるな」と、照れ笑いした。
パリは魅力的な場所という。「パリは芸術の都でしょ。今回、一番うれしかったのは、(サルトルが設立した新聞社の)『リベラシオン』創刊号に載っていたサルトルの写真をもらったこと。このカフェでサルトルがボーボワールを口説いてたのかな、とかね。そのぐらいの魅力ある場所。ピカソとかマチスとかがいて、文化を語っていた場所ということはよく知ってたんでね。そこにファンがいるっていうのはうれしい。フランス語で書かれた自伝も出るんだよ」と打ち明けた。「パリを舞台に映画を撮りたくならないか」との質問には、「全然だめだ。フランス語が分からないから」と笑った。
カルティエ現代美術財団では、絵画やオブジェを展示する北野武/ビートたけし展「絵描き小僧」を9月12日まで開催。また、パリの現代美術館ジョルジュ・ポンピドー芸術文化センターで、全監督作品や出演作が6月26日まで上映されている。