「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」駒野は立ち直らなくてはならない。南アW杯

W杯PK戦で日本敗退〜「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」2010年6月30日 11時2分 (RBB TODAY





駒野を慰める闘莉王ら。PK戦終了後泣き崩れる駒野を目を真っ赤にした松井が慰めている様子がテレビで流れ、多くの人の涙を誘った(FIFAサイトから)(RBB TODAY) まさにPK戦の残酷さを見せつけられた。ワールドカップW杯)決勝トーナメント1回戦、日本対パラグアイ戦が29日深夜行われ、PK戦の結果、3人目の駒野が外し日本は敗退した。



 日本対パラグアイ戦はともに決定機を得点に結びつけられず、0対0のままPK戦へと突入した。パラグアイの選手が全員決めたなか、日本は3人目の駒野がクロスバーに叩きつけ、ボール上方に逸れていった。敗退が決まったあと、ピッチ上で目を真っ赤にした松井が駒野を慰めている姿が涙を誘った。



 PK戦は残酷だ。誰かがゴールを外し、勝負を決定しなければならない。それが自国の選手でないことを願うしかない。今回はたまたま駒野にその“役割”が与えられてしまった。過去のW杯でもPK戦は多くのドラマを生んでいる。前回ドイツ大会では、決勝戦イタリアフランスPK戦にもつれ込んだ。フランスはトレセゲが外し、イタリアが優勝した。また、94年アメリカ大会の決勝ブラジル対イタリアでは、当時のイタリアのエースバッジョと守りの要であったバレージが外し、ブラジルが優勝した。バッジョは「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」、「PKを決めても誰も覚えていないが、外したら誰もが忘れない」 とPKに関する言葉も残している。



 FIFA公式サイトの日本対パラグアイ戦の写真もPK戦のものばかり。駒野が外したシーン、そしてその駒野をチームメイトが慰めるシーンもある。結果は残念だったが、W杯前には想像もできないような盛り上がりを見せたのは、やはり日本代表がおおいに健闘したからだ。ベスト16の結果を残し、日本代表のW杯が終わった。


ドイツ公共放送「ARD」で解説を務めたかつての名選手ネッツァー氏は「駒野はこの場面を生涯忘れられないだろう」と話したという。PK戦。駒野のシュートクロスバーを直撃して大きくはねた。頭を抱える駒野。そして大会からの敗退が決まると、泣きじゃくった。敗戦は、駒野ひとりの責任ではない。誰が、駒野を慰めたか。



 バーをたたき、上方に大きく弾んだ自らのシュートに、駒野は天を仰ぎ、頭を抱えた。うつむいてセンターラインの仲間の所へ戻る駒野を抱きかかえるようにして迎え、列の中へ招き入れたのは、大会前にその腕からキャプテンマークを剥奪された中沢だった。



5人目のキッカーカルドソが決勝のゴールを決めると、歓喜の輪をを抜けだし、1人のパラグアイ選手が駒野に駆け寄り、額をすりつけるようにして何かを語りかけた。自身4人目のキッカーとして落ち着いてゴール中央にPKを決めたアエドバルデスだった。おそらくスペイン語だったのだろう。駒野は何を言われているのか分からないはずだが、しきりにうなづいていた。気持ちは通じていたのだろう。



 一番長く駒野の肩を抱いていたのは、松井だった。そして駒野以上に泣いていた。何も言わず、しゃくり上げ、ただただ肩を抱き続けていたようにみえた。そして逆の肩を、阿部が抱いた。



 サポーターへのあいさつに駒野を背を押していざなったのは、稲本だった。努めて笑顔だった。駒野は笑顔を返すことはできなかった。それでも稲本は笑みを送り続けた。



 ロッカ−ルーム引き上げミックスゾーンに姿をみせた駒野は、無言でうつむき、報道陣の前を通り過ぎた。バッジオが、バレジも味わったPK戦の残酷。だが多くの仲間に支えられ、駒野は立ち直らなくてはならない。