浅田真央世界選手権で逆転優勝2位はキム・ヨナ「五輪の借りを世界戦で返す」 安藤 4位、鈴木11位
フィギュア世界選手権最終日(27日、イタリア・トリノ)女子フリーが行われ、前日のショートプログラム(SP)2位の浅田真央(19)=中京大=は129・50点、合計197・58点で優勝した。08年大会(イエーテボリ、スウェーデン)以来、2大会ぶりとなる「世界女王」に返り咲いた。SP7位と出遅れたバンクーバー五輪金メダリストの金妍児(キム・ヨナ、19)=韓国=はジャンプで転倒したが、合計190・79点をマークして2位。SP首位の16歳、長洲未来(米国)は7位に沈んだ。
最後のポーズで高くあげた両腕を、力強く振り下ろした。柔らかい笑顔を、大きな拍手が包み込む。真央の今季最終戦は、有終の「鐘」の響きで締めくくられた。
冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させると、続く連続ジャンプも着氷。2つ目は回転不足と判定されたが、フリーの楽曲、荘厳な「鐘」に乗って優雅なスパイラル、スピンなど5項目のうち4つで最高難度の「レベル4」を獲得した。
1カ月前に苦杯をなめさせられた金妍児を合計で約7点も上回り、昨年譲った世界女王の座を力強く奪い返し、「自分の中で、ほぼパーフェクトな演技を達成できたことが一番うれしかった」。
五輪で金メダルを獲ったライバル、金妍児は達成感から「五輪後はスケート自体をやりたくなかった」とモチベーションの持ち方に苦心していた。それは真央も同じ。「練習に気持ちが上がってこなかった」。走り続けてきた今季の疲労も蓄積し、燃え尽きた部分もあったが、気持ちを奮い立たせた。
名古屋市内の自宅の部屋には常に、目標を書いた紙がはってある。今年の正月に書いた目標は「五輪と世界選手権で金メダル」。五輪での達成はかなわなかったが、残されたチャンスのために五輪後も目標を書きかえず、そのままにしておいた。自宅にはもう1つ、「いつも見えるところに置いて悔しさを忘れないように」と誓う銀メダルも加わり闘争心をかき集めた。
世界選手権後の4月にはアイスショーを消化した後、母・匡子さん(47)や姉・舞(21)と骨休めに海外旅行に行く予定。真央は「試合が終わったらピザを食べるのが楽しみ」と笑顔をみせた。日本選手で世界選手権を2度制したのは初めて。4連敗と圧倒されてきた宿敵に今季最終戦で一矢報いた。序盤の出遅れもあった今季。喜怒哀楽に満ちた激動のシーズンは、「真央スマイル」で幕を閉じた。
浅田真央 2010世界選手権で優勝 セレモニー YouTubeより
■ フィギュア世界選手権最終日(27日、イタリア・トリノ)五輪女王は、演技を終えて小首をかしげた。だが、その顔に後悔はない。SPでまさかの7位と出遅れた金妍児は、3回転サルコーで転倒し、終盤の2回転半は踏み切りで失敗。2度のジャンプのミスで、フリーは五輪で出した世界歴代最高を20点近く下回る130・49点と失速。それでも、「大会を終われてうれしい。今季が終わるこの瞬間を待っていた」と晴れやかな表情。
五輪で頂点を極めた後の虚脱感を味わい、「五輪の後、ここへ来て戦うのが怖かった」と正直な心境を吐露した。
■女子シングル
順位 氏名 所属 ポイント SP FS
1 浅田 真央 JPN 197.58 2 2
2 金 妍児 KOR 190.79 7 1
3 ラウラ・レピスト FIN 178.62 3 6
4 安藤 美姫 JPN 177.82 11 3
5 シンシア・ファヌフ CAN 177.54 8 4
6 カロリーナ・コストナー ITA 177.31 4 5
7 長洲 未来 USA 175.48 1 11
8 Ksenia MAKAROVA RUS 169.64 5 8
9 レイチェル・フラット USA 167.44 6 9
10 ヴィクトリア・ヘルゲション SWE 161.79 9 10
11 鈴木 明子 JPN 160.04 20 7
12 Sarah HECKEN GER 153.94 13 13
13 アレーナ・レオノワ RUS 152.86 14 14
14 ジェナ・マコーケル GBR 150.9 15 12
15 ユリア・セバスチャン HUN 147.66 10 15
16 劉 艶 CHN 141.29 18 16
17 Cheltzie LEE AUS 137.78 17 17
18 エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ GEO 137.33 12 21
19 キーラ・コルピ FIN 134.49 16 20
20 Sonia LAFUENTE ESP 133.31 21 18
21 エレーナ・グレボワ EST 132.85 22 19
22 Min-Jung KWAK KOR 120.47 23 22
23 アナスタシア・ギマゼトディノワ UZB 113.89 19 23
24 Manouk GIJSMAN NED 111.94 24 24
25 Ivana REITMAYEROVA SVK FNR 25
26 サラ・マイヤー SUI FNR 26
27 タマル・カッツ ISR FNR 27
28 トゥーバ・カラデミル TUR FNR 28
29 ミリアン・サムソン CAN FNR 29
30 Kerstin FRANK AUT FNR 30
31 Victoria MUNIZ PUR FNR 31
32 Bettina HEIM SUI FNR 32
33 Fleur MAXWELL LUX FNR 33
34 Teodora POSTIC SLO FNR 34
35 Karina JOHNSON DEN FNR 35
36 Zanna PUGACA LAT FNR 36
37 Mirna LIBRIC CRO FNR 37
38 Lauren KO PHI FNR 38
39 Martina BOCEK CZE FNR 39
40 Irina MOVCHAN UKR FNR 40
41 Sonia RADEVA BUL FNR 41
42 Ana Cecilia CANTU MEX FNR 42
43 Crystal KIANG TPE FNR 43
44 Georgia GLASTRIS GRE FNR 44
45 グウェンドリン・ディディエ FRA FNR 45
46 Marina SEEH SRB FNR 46
47 Clara PETERS IRL FNR 47
48 Tamami ONO HKG FNR 48
49 Abigail PIETERSEN RSA FNR 49
50 Charissa TANSOMBOON THA FNR 50
51 Sabina PAQUIER ROU FNR 51
52 Yoniko Eva WASHINGTON IND FNR 52
53 Beatrice ROZINSKAITE LTU FNR 53
WD Isabelle PIEMAN BEL
WD Sonja MUGOSA MNE
(付録)真央の奮闘が、ギネスブックに申請
悔し涙とともに手にした五輪の銀メダルに、「世界一」の称号をつける。バンクーバー五輪の夢舞台で高難度ジャンプに挑んだ真央の奮闘が、ギネスブックに申請されることが27日、わかった。
同五輪のSPで1度、フリーで2度、計3度のトリプルアクセルを世界で初めて成功させた女子選手として、所属事務所が日本スケート連盟を通じギネスブックに申請。現在手続きの確認をしており、今春にはロンドンに本社を置く「ギネス・ワールド・レコード社」に申請書類を提出するという。
「記録達成が証明されること」などの条件を満たしていることから承認は確実で、早ければ9月に発行されるギネスブックに記載される見通し。実現すれば、日本フィギュア界では89年世界選手権(パリ)で初めてトリプルアクセルを成功させた伊藤みどり、02年のジュニアGPファイナルで初めて4回転ジャンプを成功させた安藤美姫(トヨタ自動車)に次ぐ3例目となる。