名脇役二人ニヒルな悪役で名演技佐藤慶、日本一の“おばあさん役北林谷栄死す
◆98歳日本一の“おばあさん役者”
劇団民芸創立メンバーで、映画やテレビドラマのおばあさん役で親しまれた女優の北林谷栄(きたばやし・たにえ、本名安藤令子=あんどう・れいこ)さんが4月27日午後8時40分、肺炎のため東京都世田谷区の病院で死去した。98歳。東京都出身。葬儀は近親者のみで行った。後日お別れの会を開く。喪主は長男河原朝生(かわはら・あさお)氏。
東京・銀座生まれ。1935年に創作座に参加した後、新協劇団に移って滝沢修さんや宇野重吉さんらと共演、初舞台「どん底」で注目された。同劇団は解散させられ移動劇団で活動した。
戦後、民衆芸術劇場を経て50年に滝沢さん、宇野さんらと劇団民芸を創立、看板女優として活躍した。舞台の代表作に「泰山木の木の下で」「タナトロジー」「粉本楢山節考」など。脚色や演出も手掛けた。映画では「キクとイサム」「橋のない川」など今井正監督作品のほか、「ビルマの竪琴」「キューポラのある街」「赤い殺意」「大誘拐 Rainbow Kids」「阿弥陀堂だより」に出演。アニメ「となりのトトロ」ではおばあさん役を声で演じた。テレビは「前略おふくろ様」など。
作品の多くで老いた女性を演じ、着物や小道具を自分で収集したり、前歯を取るなど役作りに徹して“日本一のおばあさん役者”と呼ばれた。
2003年に再演された「泰山木の木の下で」が最後の舞台となった。1978年紫綬褒章。
◆悪役で名演技、ニヒルな存在感81歳
大島渚監督の映画などで存在感のある演技を見せた俳優の佐藤慶(さとう・けい、本名慶之助=けいのすけ)さんが2日午後4時19分、肺炎のため東京都世田谷区の病院で死去した。81歳。福島県出身。葬儀は近親者のみで行った。喪主は長男純(じゅん)氏。
福島県会津若松市役所に勤務しながら演劇に熱中し、1950年に上京。俳優座養成所で学び「人間の條件/第3・4部」(59年)の脱走兵役で映画デビューした。大島監督「青春残酷物語」(60年)への出演をきっかけに「日本の夜と霧」「絞死刑」「儀式」など同監督作品には欠かせない俳優となった。
残虐なやくざの親分や冷酷なエリートといった悪役で存在感を発揮。60〜70年代には黒木和雄監督「日本の悪霊」、新藤兼人監督「裸の十九才」「鬼婆」、今井正監督「武士道残酷物語」など名監督の作品や武智鉄二監督「白日夢」などの話題作にも多数出演した。
テレビでは、65年のNHK大河ドラマ「太閤記」をはじめ、数々のドラマに重要な脇役として登場。ドキュメンタリー映画「東京裁判」などナレーションの分野でも活躍。舞台「イーハトーボの劇列車」では紀伊国屋演劇賞を受賞した。
★北林 谷栄(きたばやし たにえ、1911年5月21日 - 2010年4月27日)は、日本の女優・声優。
本名・安藤 蓮以子(あんどう れいこ)。
来歴・人物
東京都銀座に生まれ、1931年に創作座の研究生となる。1936年に新協劇団へ入り、築地小劇場の『どん底』で初舞台を踏む。
1947年、宇野重吉や滝沢修らと民衆芸術劇場を設立。1950年には劇団民藝創立に加わり、以後、第一線で活躍した。1989年、動脈瘤破裂で倒れたが、大手術を受けて見事に復帰した。この際、臨死体験をしたと主張、詳細は『証言・臨死体験』(立花隆著、文藝春秋)に記されている。
舞台のみならず、映画やテレビドラマでも活躍し、紀伊國屋演劇賞、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞など数々の賞を受ける。1978年、紫綬褒章受章。
若い頃から老け役を演じることが多く、日本を代表する「おばあちゃん」役者でもある。同じく生涯老け役を演じた笠智衆と並び称されている。
特に、映画・テレビ共に、田舎の農村・漁村・山村で生活する老婆を演ずることが多い。ただし、本人の生まれ同様の口跡爽やかな江戸っ子(『鬼平犯科帳』第1シーズン第13話「笹やのお熊」1989年)・東京っ子(『銀座わが町』1973年) も演じた。これに関連して、地方公演の際、農家に案山子の服がほしいと頼んだことがある(「クイズダービー」第789回(1991年6月1日放送分)最終問題より)。
1974年公開の映画『華麗なる一族』では、他作品でのおしゃべりな印象の演技とは異なり、台詞は「あっ、そう」の一言と笑い声だけという佐橋総理夫人を演じている。
1956年と1985年に、市川崑監督で映画化された『ビルマの竪琴』には、両作品ともに同じ役どころで出演した(物売りの老婆役)。
1988年春公開の『となりのトトロ』でも、「おばあちゃん」の役の声優として出演した。
2010年4月27日、肺炎のため逝去[1]。享年100(満98歳没)。北林の逝去の報に劇団民藝の後輩である奈良岡朋子、大滝秀治が哀悼のコメントを発表している[2]。
尚、北林は日本の演劇人の中で最年長の長岡輝子に次ぐ高齢者だった。
主な出演
舞台
かもめ
奇蹟の人
ハロルドとモード
蕨野行
泰山木の木の下で
映画 [編集]
禍福(1937年、PCL(東宝)) - 本田さん
破戒(1948年、松竹) - 叔母
醜聞(1950年、松竹) - 蛭田やす
恋人(1951年、新東宝) - 佐伯さん
原爆の子(1952年、北星) - おとよ婆さん
人生劇場 第一部 青春愛欲篇(1952年、東映) - おみね
人生劇場 第二部 残侠風雲篇(1953年、東映) - おみね
太陽のない街(1954年、新星映画) - 松太郎の婆
ビルマの竪琴(1956年、日活) - 物売りの婆さん
有楽町で逢いましょう(1958年、大映)−祖母
キクとイサム(1959年、大映) - しげ子婆さん
鍵(1959年、大映) - はな
にあんちゃん(1959年、日活) - 坂田の婆
太陽の墓場(1960年、松竹) - ちか
釈迦(1961年、大映) - スミイ(貧者の一燈の老婆)
婚期(1961年、大映) - 婆や
喜劇 にっぽんのお婆あちゃん(1962年、松竹) - おとぼけ婆さん・くみ
キューポラのある街(1962年、日活) - うめ
青い山脈(1963年、日活) - 家庭科教師・白木
女系家族(1963年、大映) - 君枝
鉄砲犬(1965年、大映) - 小玉きぬ
大魔神逆襲(1966年、大映) - 老婆かね
黒部の太陽(1968年、日活) - きく
肉弾(1968年、ATG) - 古本屋の婆さん
千羽鶴(1968年、大映) - お手伝いのおとよさん
橋のない川(1969年、ほるぷ映画) - 畑中ぬい
ごろつき無宿(1971年、東映) - 勇(高倉健)の母
紙芝居昭和史 黄金バットがやって来る宿(1972年、東宝) - ぎん
華麗なる一族(1974年、東宝) - 総理夫人
エデンの海(1976年、東宝) - 菊
人間の証明(1977年、東映) - 久之浜の老女
野性の証明(1978年、東映) - 松下きよ
あゝ野麦峠(1979年、東宝) - お助け茶屋の老婆
震える舌(1980年、松竹) - 昭(渡瀬恒彦)の母
駅 STATION(1981年、東宝) - 三上昌代
真夜中の招待状(1981年、松竹)
疑惑(1982年、松竹) - 白河はる江
男はつらいよ 旅と女と寅次郎(1983年、松竹) - 吾作の老婆
ビルマの竪琴(1985年、東宝) - 物売りの婆さん
ビリィ・ザ・キッドの新しい夜明け(1986年、パルコ) - 老婦人
ゴキブリたちの黄昏(1987年、ヘラルド・エース) - トーラ
山田村ワルツ(1988年、松竹) - 堤ハナ
となりのトトロ(1988年、東宝) - ばあちゃん ※声の出演
利休(1989年、松竹) - 大政所
大誘拐/RAINBOW KIDS(1990年、東宝) - 柳川とし子刀自
阿弥陀堂だより(2002年、東宝) - おうめ婆さん
黄泉がえり(2003年、東宝) - 内藤サキ
テレビドラマ [編集]
山一名作劇場(NTV)
石中先生行状記(1957年)
春の孤独(1958年、NTV)
東芝日曜劇場(KR → TBS)
窓の灯(1959年)
廃市(1965年)
アディオス号の歌(1966年、RKB)
海はこたえず(1966年、HBC)
子守唄由来(1967年、RKB)
24才シリーズ その4(1968年)
いのちの歌(1970年、CBC)
おばあちゃんの結婚(1976年、RKB)
こぎとゆかり(1978年、CBC)
朝の台所(1980年・1981年)
同行二人(1983年、MBS)
星の旅人たち(1985年、CBC)
サラダ記念日(1987年)
サンヨーテレビ劇場(KR)
おばあさん(1959年)
テレビ劇場(NHK)
広島に生きる(1959年)
大河ドラマ / 太閤記(1965年、NHK) - 茶売りの老婆
風と樹と空と(1965年 - 1966年、NTV)
海より深き(1965年、RKB)
近鉄金曜劇場(ABC)
愛とこころのシリーズ 牛と少年(1966年)
愛とこころのシリーズ 杉の岬物語(1967年)
柚子家の法事(1966年、KTV)
船場(1967年、KTV)
天の山(1967年、RSK)
ポーラ名作劇場 / 華岡青州の妻(1967年、NET)
水曜劇場 / 甘柿しぶ柿つるし柿(1969年、TBS)
ややととさん(1969年、YTV)
土曜劇場 / 五代家の嫁(1970年、KTV) ※脚本:花登筐
おくさまは18歳(1970年、TBS) - 飛鳥の祖母
徳川おんな絵巻 第15話「幻の姦通」・第16話「愛と野望と」(1970年、KTV) - 狂女
連続テレビ小説 / 繭子ひとり(1971年 - 1972年、NHK)
木枯し紋次郎 第2シーズン 第6話「女郎蜘蛛が泥に這う」(1972年、CX) - お甲
静かなる爆薬(1972年、NHK) ※北林の演技でギャラクシー賞受賞
銀座わが町(1973年、NHK)
おんな家族(1974年、TBS) - 山城桃子
前略おふくろ様(1975年、NTV) - 浅田ぎん
高原へいらっしゃい(1976年、TBS) - 有馬ふくえ
新・座頭市 第1シリーズ 第13話「母の涙に市が走った」(1976年、CX) - 志乃
土曜ワイド劇場 / 野菊の墓(1977年、ANB)
特捜最前線(ANB)
第41話「シクラメンは見ていた!」(1978年)
第127話「裸の街I・首のない男!」・第128話「裸の街II・最後の刑事!」(1979年)
白い巨塔(1978年、CX) - 山田うめ
花王名人劇場 / 津軽三味線よされぶし(1979年、KTV)
七人の刑事 第36話「市民の海」(1979年、TBS)
24時間テレビ スペシャルドラマ / 機の音(1980年、NTV)
カネボウヒューマンスペシャル / 小児病棟(1980年、NTV)
淋しいのはお前だけじゃない 第10話「四谷怪談」(1982年、TBS)
月曜ワイド劇場 / 妻たちの復讐(1983年、ANB)
火曜サスペンス劇場 / 見えない橋(1984年、NTV)
木曜ゴールデンドラマ(YTV)
千羽鶴幻想(1984年)
死刑執行48時間(1984年)
なぜか、ドラキュラ(1984年・1985年、NTV)
銀河テレビ小説 / 下町三人娘(1986年、NHK)
ドラマ人間模様 / 極楽への招待(1987年、NHK)
宇宙飛行士エリソン・オニヅカと母(1989年、TX)
鬼平犯科帳 第1シーズン 第13話「笹やのお熊」(1989年、CX) - お熊
オレゴン日記'89(1989年、CX)
腕におぼえあり(1992年、NHK) - 青江きん
琉球の風(1993年、NHK) ※ナレーター
今夜もテレビで眠れない 第2話「あの人だあれ?」(1995年、TBS)
ストップ・エイズ 20の赤いバラ(1997年、ANB
日本アカデミー賞最優秀主演女優賞
1970年代 77 岩下志麻 / 78 大竹しのぶ / 79 桃井かおり
1980年代 80 倍賞千恵子 / 81 松坂慶子 / 82 松坂慶子 / 83 小柳ルミ子 / 84 吉永小百合 / 85 倍賞美津子 / 86 いしだあゆみ / 87 宮本信子 / 88 吉永小百合 / 89 田中好子
1990年代 90 松坂慶子 / 91 北林谷栄 / 92 三田佳子 / 93 和久井映見 / 94 高岡早紀 / 95 浅野ゆう子 / 96 草刈民代 / 97 黒木瞳 / 98 原田美枝子 / 99 大竹しのぶ
2000年代 00 吉永小百合 / 01 岸惠子 / 02 宮沢りえ / 03 寺島しのぶ / 04 鈴木京香 / 05 吉永小百合 / 06 中谷美紀 / 07 樹木希林 / 08 木村多江 / 09 松たか子
★佐藤 慶(さとう けい、1928年12月21日 - 2010年5月2日)は、日本の俳優、ナレーター。福島県会津若松市生まれ。本名は佐藤 慶之助。
来歴・人物
福島県立会津工業学校卒業後、会津若松市の職員を務めるかたわら、地元で結成した新劇愛好会で演劇に打ち込むが、会の発表会の日に無断欠勤をして役場を免職されたという「根っからの新劇人」ぶりが高じ上京。俳優座養成所から俳優人生をスタートする(俳優座の第4期生の同期には仲代達矢、佐藤允、中谷一郎、宇津井健などがいる)。
1955年以降、大島渚監督の一連の作品をはじめ、映画、舞台、テレビドラマで存在感のある悪役などを演じる。その無機質な風貌を生かし、屈折した性格の悪役を得意とし、社会派作品から時代劇・ヤクザ映画まで、様々な作品で総合的性格俳優として活躍する。
1965年、『鬼婆』でパナマ映画祭主演男優賞。1971年、『儀式』『日本の悪霊』でキネマ旬報主演男優賞を受賞。1967年のテレビドラマ『白い巨塔』では、田宮二郎の野心的な雰囲気とは違った暗くねじれた個性を前面に出した財前五郎役を好演した。
また、低く泰然とした声でのナレーションも人気があり、1970年代から1980年代にかけて日本テレビで放送された科学ドキュメンタリー『知られざる世界』のナレーターを担当した。
1981年『白日夢』で武智鉄二監督の演出のもと愛染恭子と本番行為を行い、一躍話題になった。近年の代表作にはNHK連続テレビ小説『ほんまもん』、大河ドラマ『風林火山』がある。かつては月刊誌『噂の真相』を愛読しており、創刊準備号から最終号まで1号も欠かさず読みつづけたという。
また、下積み時代の生計を支えてくれたガリ版への感謝を忘れず、有名になってからもガリ版用具を大切に保管していたという謙虚な一面も持ちあわせていた。
2010年5月2日午後4時19分、肺炎のため都内の病院で死去した[1]。享年83(満81歳没)。佐藤の死去の報を受けて、市川森一(脚本家)、仲代達矢(俳優)など演劇関係者が追悼のコメントを発している[2][3]。
出演作品
映画
人間の條件 第3部(1959年、松竹)
青春残酷物語(1960年、松竹)
波の塔(1960年、松竹)
切腹(1962年、松竹)
武士道残酷物語(1963年、東映)
新選組血風録 近藤勇(1963年、東映)
鬼婆(1964年)
人生劇場 新・飛車角(1964年、東映)
徳川家康(1965年、東映)
悪名幟(1965年、大映)
白昼の通り魔(1966年、松竹)
座頭市の歌が聞える(1966年、大映)
陸軍中野学校 雲一号指令(1966年、大映)
地獄の掟に明日はない(1966年、東映)