「最後の忠臣蔵」完成報告記者会見役所広司(瀬尾孫左衛門)と佐藤浩市(寺坂吉右衛門)が共演『忍』の美学

俳優役所広司佐藤浩市が討ち入り後も生き残った赤穂浪士を演じる映画「最後の忠臣蔵」(12月18日全国公開)の完成報告記者会見東京都内で開かれた。



 役所が演じる瀬尾孫左衛門は、大石内蔵助片岡仁左衛門)から、隠し子・可音(桜庭ななみ)を守ってくれと密命を受け、討ち入り前日に姿を消した男。佐藤演じる寺坂吉右衛門は、四十七士でただ一人切腹を許されず、後世に真実を伝え、遺族の援助をするよう内蔵助から命じられた男。2人が、討ち入りから16年後に出会う。



 役所は「使命を全うすることもありますが、あるじの娘に“女”を感じてもいたのか、複雑な強さと弱さを持った面白い役。こういう日本人がいたんだと誇らしく感じました」と話し、佐藤は「日本人の(価値観の)優先順位の話。忍耐という言葉では訳せない『忍』という感情、響きの美しさがこの映画にあります」と語った。


あの赤穂浪士の中に、生き残る命を与えられた者がいた――。討ち入り後を描いた映画「最後の忠臣蔵」の完成披露会見が17日、都内で開かれ、主演の役所広司佐藤浩市大石内蔵助役の片岡仁左衛門、内蔵助の隠し子役の桜庭ななみが顔をそろえた。監督は「北の国から」で知られる杉田成道製作総指揮を務めたウィリアムアイアトンワーナー・ブラザーズジャパン社長はベネチア映画祭を軸に、世界に討ち入る決意を示した。作品は12月18日から全国で公開される。



 大石内蔵助から死ぬことを許されず、密命を与えられた2人の侍。池宮彰一郎の同名小説を原作として、忠臣蔵を再解釈した意欲作だ。大石から隠し子の行く末を託され、討ち入り前日に姿を消した瀬尾孫左衛門に役所が扮する。討ち入り後、その史実を伝え、四十七士の遺族を援助するよう命を受けた寺坂吉右衛門には佐藤。



 役所は作品の意味について「これほど主(あるじ)に忠誠を尽くし、最後も主の元へいくのを喜ぶような美しくも不思議な侍の生き方。だが、彼らは確実に僕たちの先祖である。伝えていかなくては」と語る。佐藤も「僕自身も含め、忍耐だけでは済まない『忍(しのぶ)』という美しさがどれだけ伝わるか」が見どころと話す。



 人間ドラマには定評のある杉田監督は、時代劇映画は今回が初めてとなる。「予想以上に出演陣が役にのめり込んでくれたのを見て、これはいけるなと。倹約を旨とし、清貧を美とする。己を律して人のために尽くすことを善とする。こうした日本の美意識は世界に誇れる資産です」。2人の起用理由については「日本のデニーロとアルパチーノ。お二人しか考えられなかった」と説明した。



 やはり初めての時代劇映画出演となった桜庭は、撮影の一月前から腹筋運動と発声練習をはじめ、立ち振る舞いすべてに杉田監督がけいこをつけた。「本当に緊張しましたが、監督に支えていただきました。私を含め、忠臣蔵がそれほど浸透していない世代に、日本人の美しさが伝わればいいな」と、はにかんだ。



 片岡は「私が内蔵助なんて、若すぎるのではと思いましたが、出来上がった作品を見て自分の年齢を再認識しました」と笑わせた。



 「ラストサムライ」「硫黄島からの手紙」などを手がけてきたワーナー・ブラザーズだが、今回は日本法人が幹事となって制作した映画の第一作となる。アイアトン社長は「ラストサムライ以来、日本の武士道は世界でも知られてきている。その価値観は西欧世界とは全く異なるもので、海外でも感動を呼ぶはず。伝統あるベネチアコンペティション部門を軸に、欧州の映画祭に出品する」と話した。


これまで幾度となく小説や映画の題材となってきた『忠臣蔵』の史実。四十七士の切腹で終わる物語の“その後”を描いた人気小説を映画化した『最後の忠臣蔵』の完成報告記者会見が、6月17日に帝国ホテルで行われ、キャスト役所広司佐藤浩市桜庭ななみ片岡仁左衛門杉田成道監督と製作総指揮のウイリアム・アイアトンが出席した。







本作で役所と佐藤が演じたのは、赤穂浪士の生き残りとなった2人の侍。「世代的にも近い演技派同士で共演した感想」を聞かれると、年下の佐藤は「4歳は結構、デカいんです。僕から見れば(役所は)大先輩なんで」と苦笑い。演技論などを話し合ったのかという問いに役所が「特に演技について話し合ったことはないですけど(笑)」と答えると、佐藤も「恥ずかしくてそんなことできないよね」と話していた。



撮影中、佐藤はよく競馬の話をしていたそうで、役所が「僕もそれにのっかって。当たったことはありませんけど(笑)」と打ち明けると、佐藤は隣で苦笑いしていた。



また、大石内蔵助を演じた片岡は歌舞伎界の重鎮だが、「映画は不慣れなので、役所さんと佐藤さんを先輩と見て、胸を借りて演じさせていただいた(笑)」と話し、「2人はすごいスターですから、一緒に写真を撮ってもらったり、ミーハーな気持ちで共演していました」と照れ笑いを浮かべていた。



一方、17歳の桜庭は、3人の大俳優の隣でかなり緊張した様子。彼女を起用した理由について聞かれた監督は、「彼女がコケたら、みんなコケちゃうので(笑)。何10人かの方にお会いしたが、実は最初から『この人』と思っていた」と明かした。そして、「彼女の役は“日本人”じゃなきゃいけない。今は洋風の顔ばかり多くて、“日本人の顔”があまりいないんですよ。それと、清純さ、処女性があり、品格があって、役所さんと対峙したときに力負けしない人でなければいけない」と、桜庭が適役だったと語っていた。



彼女は役所との共演シーンが多いのだが「とても緊張していたのですが、役所さんには現場ではすごく優しく話しかけてくださって、リラックスして撮影することができました」と振り返ると、役所は「すごくカンの良い女優さん」と賛辞を送っていた。



本作は、『ラスト サムライ』『硫黄島からの手紙』などを手がけてきたハリウッドメジャーのワーナー・ブラザース映画が、日本で初めて、本格的に製作に乗り出したローカルプロダクション作品。脚本を選ぶのに3年かけ、満を持して手がけた自信作。世界配給も視野に入れているそうで、「ヨーロッパの映画祭にも出品したい。ヴェネチア国際映画祭コンペティション出品を狙いたい」と話すアイアトンは、「サムライスピリットは世界にも伝わると思う」と自信をのぞかせた。20億円の興行収入を目指すそうで、今後も日本でのローカルプロダクションに力を入れていく予定で、アイアトンは「年間7〜8本くらい手がけていきたい」と意気込む。次作もすでに進行中で「2ヵ月以内に発表したい」と話していた。



最後の忠臣蔵』は12月18日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開される。